更新日 01/23/2003

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松枯れのメカニズム

枯れた松の材内で越冬したカミキリの幼虫が4月頃から蛹になり、

約20日後に羽化するとき、それまで松の中にちらばっていた

マツノザイセンチュウはカミキリの蛹室の中に入りこみ、

カミキリの腹部の気門という呼吸のための穴から、カミキリの体の中に

入りこみます。そしてカミキリはマツノザイセンチュウを体内に

多数保持して松から外に飛び出します(5月中旬〜7月中旬頃)。

 

飛びだしたカミキリは、健全な松の当年枝や1年枝などの

若枝の樹皮を食べます(後飢5月中旬〜8月)が、この時、カミキリの

体内に侵入していたマッノザイセンチュウはカミキリの体から這いだして

カミキリの噛つた部分から松の材内に侵入してゆきます(5月〜8月頃)。

マツノザイセンチュウは材内で繁殖しつづけ、そのため健康な

松も生理異常を起し、樹脂の分泌及び蒸散を停止して枯死してしまいます

(9月〜10月頃が多いが、以降も続く)。

材内のマツノザイセンチュウは木の中で生き残り、翌年春に羽化脱出する

カミキリの体に入りこみ、他の松の木に運ばれてゆきます。

 

一方、カミキリは元来衰弱した松にしか産卵しませんが、

カミキリが産卵する頃には(羽化脱出後2〜3週間後)、

カミキリが松に運んできたマツノザイセンチュウによって

松は弱ってきていますので、カミキリはその衰弱した松に

産卵します(6月上旬〜9月下旬頃)。

1週間ほどでふ化したカミキリの幼虫は、樹皮下を食害しはじめ、

しだいに材の内部にもぐりこみ、晩秋頃までには材内に蛹室を作り

そこで越冬します。そして、このサイクルが毎年繰り返されるわけです。

このようにマツノマダラカミキリはマツノザイセンチュウを健康な

松に運ぶことで産卵できる状態の衰弱した松の木を用意してもらい、

一方マツノザイセンチュウはその代償として健康な松から他の松へと

運んでもらう。つまり両者は共生関係を営みながら、マツノザイセンチュウが

次から次へと伝播し、松枯れを起こし、広がってゆくわけです。